夕食の後、リビングのテレビを付けていたら食器を洗い終えたフリオニールが私の隣へとやって来た。
その時ふと気付いたのは、何かの香り。
甘く柔らかな花の香りは、隣に居る恋人からしてきた。
「君は香水を付けていただろうか?」
「えっ?……香水なんて付けてないけど?」
不思議そうに首を傾ける彼、だがその甘い香りはやはり彼からする。
「そうか、花の香りがするんんだが」
「花の…あっ、俺の手かな?」
そう言って差し出された手、確かに香りの元は彼の手からだ。
一体どうしたのかと聞くと、彼はポケットから小さなチューブを取り出した。
「冬場に水仕事すると手が荒れてさ、最近冷え込んで特に手荒れが酷くなってきたから…ハンドクリーム買ったんだ」
彼が手にしていたのは、ピンク色に赤い花が描かれた可愛らしいパッケージのハンドクリーム。
薔薇の花の成分が含まれていて、花の香りがするのはどうやらその所為らしい。
「なんか……やっぱり女の子みたいだったかな?」
「いや、良い香りがする……私は好きだぞ」
正直にそう言うと、彼の顔が嬉しそうに輝いた。
そんな彼に私も微笑み返し、差し出されたままだった手を両手で包み込む。
水を触る為に冷えて赤くなった指先は、見た目以上に冷たい。
「あの、ウォーリア?」
少し頬を染めて私を不思議そうに見つめる相手に私はそっと微笑み、もう片方の手も一緒に握りしめる。
ちょっとずつ温もりを取り戻しつつある彼の手。その指先へそっと口付けると、ふわりとした薔薇の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「これからは、私も家の事を手伝おう」
「いいよ……俺、居候させてもらってる訳だし。家事は俺が負担するって前から決めてるだろ」
自分が本当に忙しい時ならばいざ知らず、それ以外の時は、彼は家事は自分がするのだとそう言い張る。
だが、無理をさせていないのかと時折心配になる。
こういう事を聞くと、特に。
だから、せめて君の事を最大に甘やかしたい。
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という事で、冬のWOLフリでした。
フリオは主夫なんで、年中の家事の苦労を知っているんだろうな…という。
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