「暑い……」
「そりゃ、夏だしな」
確かに的を射た言葉ではあるが、それを言っては何か終わった気分になる。
だって、どうしようもないもんな。
季節を変える様な力は、流石に持ってないって…。
「なぁ兄貴、クーラー付けようぜ」
「駄目だって、お前付けたら付けっぱなしじゃんか…設定温度も低いし」
兄貴が環境に配慮し過ぎなんだって、何で設定温度を常時28℃にして平気なの?
知ってる?地球は温暖化してるんだよ?このままだと部屋で熱中症になって病院行きになるよ。
「なら、そうならないように…早く俺から離れろ」
「そんな事言わないでよ、兄貴」
兄貴の背中に張り付いている俺に対し、兄貴は洗濯物を畳みながらそう話す。
どんな季節だって、俺は兄貴の側に居たいワケなんだって。
「邪魔なんだけど」
「兄貴への愛です」
「鬱陶しい」
「……兄貴、暑いからって俺への当たり方ちょっと酷くない?」
「適切な対応のつもりだけど」
そんなに即答で返さないでよ、俺本気で傷つくから。
「お前が何か涼しくなるアイディアを提供してくれるなら、お前の好感度を少し上げてやってもいいぞ」
「何ソレ……」
クーラー付ける以外に、何か涼しくなるようなアイディアなんてあるのかって……。
「ああ!あった」
ある事を思い出した俺は、立ちあがってキッチンへと向かう。
そして取り出した物を手に、兄貴の元へと戻る。
「はい、兄貴」
「ふぁっ!!」
半分に分けたアイスを、後ろから兄貴の頬へと押しつければ、甲高い兄貴の声が上がった。
コンビニで買って、そのまま放りこんでいたのを思い出したのだ。
「兄貴に半分あげる」
笑顔で片方を手渡すと、パチクリと瞬きすると、直ぐに笑顔になって「ありがとう」とお礼を言ってくれる兄貴。
「やっぱり、この時期の冷たい物は美味しいな」
ニッコリと笑ってそう言う兄貴…やっぱり可愛い。
っていうか、チューペット吸い上げる兄貴の口元がエロいんですけど!!
「うん、美味しいよね」
ニッコリ笑って答える俺に、そうだなと無垢な笑顔を返す兄貴。
うん、やっぱり兄貴は純粋な子だね。
「あー……冷たい」
パッと兄貴が口を離した隙に、兄貴の手の中にあるアイスに口を付ける。
「あっ!お前、自分のあるだろ!!」
俺を見てそう言う兄貴から、アイスを奪い取って、代わりに兄貴に俺を食べかけのアイスを差し出す。
「交換しようよ、なんかソッチのが美味しそうだし」
「二つとも同じ味だろ?」
溜息といっしょに俺の食べかけの片方を受け取る兄貴が、今度はそれに口をつける。
それを見て、俺は兄貴に向けてニヤリと笑いかける。
「……何だよ?」
何か、不穏な空気を感じ取ったのだろうか?兄貴は俺を見つめそう尋ねる。
「ん~?美味しい兄貴?」
「……まあ、美味しいけど」
「へぇ、美味しいんだ。俺の」
「……お前、何かその言い方イヤらしい」
「それは兄貴がイヤらしい事考えてるからじゃない?」
そう言うと、兄貴はちょっと怒ったように俺を睨み返す。
もう、怒らないでよ兄貴。
だが、そう思う俺の顔もニヤけえているらしく、兄貴は更に返して「何だよ?」と問い返す。
じゃあ、正直に言ってしまいますか。
「んふふ…・間接だなって思って」
「間接?」
「間接ちゅー」
俺の言葉に、兄貴の方肩がピクリと揺れる。
「あっ……・え…」
「ん?今になって気付いたの?」
一気に真っ赤に染まった兄貴を見て、俺はニヤリと笑う。
「いいじゃんか別に、俺達兄弟でしょ?……更に言えば恋人だし」
「良くない!ってか、俺の返せ」
「返していいの?また間接になるけど」
そう言うと、兄貴は言葉を失ってしまったようでだんまりする。
「でも、俺のチューは美味しいんだ。兄貴!」
「なっ!!おまっ!…それは違うだろ意味が!!」
俺に向けて真っ赤になって否定するものの、そんな事はどこ吹く風、である。
「あー……でも、俺は本物の兄貴の方が美味しいかな?って事で、兄貴とちゅーしたいです」
「この馬鹿野郎!!」
「ちょっ兄貴!待って!!」
恥ずかしいからって、照れ隠しに踵落としは止めてください!!!!
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最近、自分の中でアナフリがどんどん兄馬鹿な子になっていってどうしようか、と思うのですが。
暑くても兄貴からは離れない、何があっても兄貴が一番って……。
まあ、それでもいっか!!という結論に、至った次第です。
フリオは間接とかめちゃくちゃ意識しそうですが、身内的な人(アナフリ・レオンハルト他)に対しては、なんかそんな意識が希薄だといいな……という、個人的な希望です。
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