「先輩の負けッスね!」
ニコニコと良い笑顔でそう言う後輩を、俺は溜息混じりに見返す。
「暇だからゲームでもしません?」
カードを取り出してそう言った後輩に、俺は暇なら勉強しろ、もうすぐ試験だろう?と、俺はそう言ったのだが…その台詞は綺麗に無視された。
「先に三回負けたら罰ゲームって事で」
そういうのは、大人数の時の方が盛り上がるんじゃないのか?という俺の言葉も、またまたスルーされ、勝手に彼の流れに乗せられる形で、ゲームは始められたわけなのだが……。
「先輩スッゴイ弱いんッスね」
ビックリしたッス、と彼は笑いながらそう言う。
三戦全敗……俺って運悪いな。
「先輩、罰ゲーム決定ッス」
「はぁ…まったく。それで、罰ゲームって一体何やるんだ?」
俺の質問に対し、後輩は目を輝かせて「よくぞ聞いてくれました!」と何やら嬉しそうにそう言う。
あっ……なんか、嫌な予感。
「じゃじゃーん」
そんな効果音と共に、彼が鞄の中から取り出したのは、誰もがよく知るであろうお菓子の赤い箱。
「ティーダ…それで何やらせるつもりだ?」
「何って、そりゃポッキーゲームでしょ?」
「…………誰と?」
「先輩と俺で」
何をにこやかな顔で言ってるんだ、この馬鹿は。
「なっ!!誰がそんな事!」
「だって、先輩ゲームやって負けたじゃないッスか!嫌なら最初っから断ればいいんッス」
うっ……それは確かにその通りだ。
だけど!!
「ほら、文句言わずにやるッスよ」
はい、とポッキーの方端を咥えて俺の方へ差し出す後輩。
ああ!!もう、この流れでやらなかったら機嫌悪くなって、後で面倒なんだよな……。
そっと彼の表情を伺と、してやったりというように、にっと口角が上がる。
コイツ、最初からこれが目的だったな……。
仕方なく、小さく溜息を吐いた後、彼の咥えているポッキーの反対側をそっと咥える。
細長いお菓子の距離というのは、人の距離にすると思うよりもずっと近い。
ポキポキと、小さな音を立ててその距離が縮まっていく。
あと残り少し。
もうそろそろ止まらないと、このままじゃ、本当にキスしてしまう。
相手との距離の近さを思い、そこで進行を止めようとした俺の頭に、相手の腕が回る。
「ん!」
残りの部分を食べきり、抑えていた俺の唇へ自分のものを押し当てる後輩。
ちゅっ、と軽い音を立て、真っ赤になった俺からすっと離れる。
「先輩、ゴチソウ様でした」
ニッと歯を見せて嬉しそうに笑う後輩。
「ティーダ…お前、何でこんな事」
「いいじゃないッスか、オレだって健全な男子高校生ッスよ、恋人とキスしたいって思って、何が悪いんッスか?」
「なっ!!馬鹿!恥ずかしい事を堂々と言うな!!」
「何でッスか?本当の事じゃないッスか」
確かにそれはその通りなのだが、しかし…その、俺の方の気持ちというのを少しは理解してほしい。
「先輩、相変わらず恥ずかしがり屋ッスね…まあ、そこが可愛いところなんッスけど」
「ティーダ…お前なぁ」
年上に可愛いはないだろう、そう思うのだが、今の少し浮かれている彼に何を言っても聞き入れられる事はないだろう、そう思って、俺は溜息を吐くくらいに留めておく。
まったく、彼の笑顔を見ていたら、怒る気力すらも削がれてしまう。
だが、触れ合いたいという気持ちが理解できないわけではないので……今回は、まあ、許すとするかな。
「先輩!」
「何だ?」
「今日も大好きッスよ」
「それ、今朝も聞いたよ……」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ポッキーゲームとか、凄い楽しんでしてくれそうな人というのが、もうティーダしかイメージなかった。
学パロ、やっぱりいいですね、大好きです。
まあ全然学校な雰囲気なかったですけど、先輩後輩っていう設定はかなり萌えだと思うのです。
でも、フリオを先生(or教育実習生)にした学パロとか、面白そうだなとか思ってたりします。
……やる事やってしまってから書こうか、自分。
PR