優勝、という二文字に場内が沸いた。
特に、自分の受け持つクラスの生徒からは大きな歓声が上がる。
球技大会、種目はバレーボール。
優勝を決めたチームメイト達が、此方へと向けてやって来る。
「ヤッタッスよ!先生!!」
ガバッと俺に抱きつく体育委員は、喜びが暴走しているのだろうか?俺の頬にそおの唇を押し当てた。
「ちょっ!ちょっとティーダ君!!」
驚きと気恥ずかしさが入り混じって、彼をなんとか引き剥がす。
相手は悪びれた様子もなく、「先生にも喜んで欲しいんッス」と笑顔でそう言う。
しかし、それにだって限度があるだろう?彼の行動に疑問を抱く俺。
それを見ていたメンバーの一人が「まぁまぁ」と俺の肩を叩く。
「いいじゃない先生、皆さ、先生に喜んで欲しくて頑張ったんだし」
「それは嬉しいけど」
「あと…」
ちょいちょいと自分の方に手招きするバッツ君に従い、彼の方に少ししゃがむと俺の耳に彼の唇が触れた。
「!」
「へへへ…先生、愛してるよ!」
そう言って走って行く彼に、俺は溜息。
「皆、先生の事が好きですから」
「セシル君…」
線の細い青年は、柔らかく俺へと微笑みかける。女性の様な柔和な顔立ちは、本当に綺麗で見惚れそうだ。
すると、彼は俺の揺っている後ろ髪にそっと手を伸ばし、その毛先に唇を落とした。
流れる様な自然な動きで行われたそれに、俺は茫然とただ立ちつくすだけだ。
「……先生」
「スコール君」
その様子をじっと眺めていた彼は、俺に何かを言おうとしているようだが…視線が彷徨って、結局何も言葉は出て来なかった。
無口な青年は、俺の方へと少し近付く。
そして、俺の右手を取るとその場に跪き、手の甲へと自分の唇を落とした。
本当に絵になる動きに、俺は言葉もなくその様子を見ていた、が…彼の方は直ぐに立ち上がると、その場から走って逃げだしてしまった。
「アンタ…少しは自覚した方がいい」
呆れた様な声と共に隣へとやって来たクラウド君に、「何を?」と首を傾けて尋ねる。
「本当に気付いてないんだな」
彼はそう言うと苦笑してみせた、そして俺の頭に手を回すと自分と同じ高さになる様に少し力を込めて引き寄せる。
その彼の唇が俺の額に軽く触れた。
それに驚きの表情を見せる俺に、彼はふと表情を緩める。
「やっぱり、アンタはそのままでいい」
そう言って、ゆっくりと立ち去って行く彼を見つめる俺の背後に、誰かの立つ気配がした。
「先生」
振り返った先に居たのは、チームリーダーでありこのクラスの学級委員長を務める青年。
「優勝、おめでとうウォーリア君」
「ありがとうございます」
俺の言葉に丁重に礼を言って微笑むと、彼は俺の方へと一歩近寄った。
普段ずっとかけていて、外す事のない銀フレームの眼鏡を外し、強く魅力的な青い瞳が直接俺を見つめる。
彼の青い目が、とても近いな…と思った、その時だった。
彼の視線にボーとしていた俺の唇に、何かが触れた。
重なり合ったそれの柔らかい感触と、腕を握られた強い力にクラクラする。
まともに呼吸ができたのは重ねられたソレが離れ、何が起こったのか理解したのは、彼が俺を再び見つめ返した時だった。
「ウォーリア君!!ちょっ!何、こんな所で!いや、何して!!」
頬に集まっていく熱、そんな俺を見つめる彼が、俺の耳元に唇を寄せる。
「他の男に、好きにさせて…私を嫉妬させたいんですか?先生…」
ああ…もう、周囲の視線の痛さも、俺の感じている羞恥も何もない。
俺の耳へ吹き込まれた彼の、低く響く嫉妬の声に、俺は心臓が大きく跳ねるのを感じた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
最後は、嫉妬WOLが体育館倉庫等でフリオ先生を美味しく頂きました…とかいうオチでお願いします。
スペインの選手が優勝トロフィーに、順に口づけしていくのが凄く印象に残ってしまいまして、ね。
フリオをトロフィーにしたてて書きたい!とか言った時、友人にはまったく意味が通用しませんでしたが、つまりはこういう事です。
実は、フリオ先生がご褒美のチュウをあげる、という球技大会小説も現在書いております。
メンバーのジャージ姿を想像するだけで、凄く萌えます。
……そんな事を考えて、なんとか日々を乗りきってます…。
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