「君は何だ?」
自分の中に居る、もう一人の私に対して問いかける。
赤い姿の私は、微動だにせずに私を見返し…そして、答える。
「お前の中に居る、もう一人の私だ」
「それは分かっている…ただ、君は私とは違う」
「当たり前だ。私と君は、まったくもって正反対だ」
フッと少し馬鹿にしたように笑いかけ、私にそう言う相手に、逆に私は苛立ちを覚える。
私は何よりもこの男が嫌いだ。
私の中に居る、私とは正反対の感情を持つこの男。
全てが私とは正反対であり、私とは違う衝動や感情の下に行動する。
私が守ろうとするモノを、彼は破壊し。
私が好きなモノを、彼は嫌う。
破壊の衝動に駆られたその姿は、私と敵対するあの男を彷彿を思い起こさせる。
「君は、好きな男が居るな」
ニヤリと私へ向けて笑って彼はそう問いかける。
誰の事を言っているのか、私自身の事なのでスグに分かり、溜息を吐く。
「君はフリオニールの事が嫌いなのか?」
そう尋ねると、彼はニヤリと笑みを深めて「いいや」と首を振る。
「とても面白い事だが、私も君と同じように彼の事が好きだ」
「……珍しい事もあるものだな」
君と私は、全くもって正反対だというのに。
「私と君の、あるハズのない共通点だ」
「それが……どうしたというんだ?」
そう尋ねる私に対し、彼はふと表情を消す。
「私は、彼を壊したい」
「…何だと?」
「私は彼を、心の底から愛し抜きたいがそれと同時に彼の全てを破壊したい…精神を崩壊させ、全てを私の物にしたい」
彼は、その内にある破壊願望を私へと曝け出す。
「そんな事はさせない」
そんな彼に首を振り、私はその欲望を拒絶する。
「何故だ?」
「私は彼を愛している、慈しみ守り、大切にしたいと思っている」
そう言う私に対し、もう一人の私は首を横に振る。
「だが、それと同時に…君は彼を自分の物にしたい、という強い欲望を持っている」
「自分の願望に取りつかれていては、何も手に入りはしない…全てを破壊してしまうだけだ」
そう、目の前に居る、もう一人の自分のように。
「それでいいじゃないか」
「いいや、良くない」
そんな寂しすぎる思いは、必要ない。
そんな悲しすぎる感情は、抱いてはいけない。
私は心の中で、自分へ向けてそう呟く。
だが、彼はそんな私を見て笑いかける。
「君は何も分かっていない」
「……何を?」
「君が本当に、彼を慈しみ・守りたいと思うのならば、私はここには存在していない事だろう」
“こんな、破壊を望む己などは…”
「綺麗事だけで、人は生きてはいない」
「ならば…君は、私の中の“悪”の部分だと?」
「その通りだ、君が光を名乗るのならば。君と正反対の私は、さしずめ“闇”と名乗った方がいいのだろう」
光と闇は相反する。
それ故に、共存できる。
全ての人間の中に、その二つは共存している。
そう……私の中にも。
「君は、それで満足なのか?」
全てを破壊する衝動を、その身の内に宿したままで。
「それを問いたいのは私の方だ、君の方こそ満足なのか?」
善と正義の為に、己の感情を犠牲にしていても……。
「私はそれで満足だ」
「私もそれで満足だ」
光と闇は共存する。
しかし、決して相容れない。
一歩も進退を許さぬまま、二つの感情は睨み合う。
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という事で、ノーマル&アナザーWOLさんの話。
フリオニールと違って、WOLの場合は、ノーマルとアナザーは凄く仲が悪そうだと思ってます。
自分の中で、フリオを巡って喧嘩してそうです。
大体は優しく接するか、欲望のままに接するかで揉めてると思われます。
以前書いた黒・光の戦士が、このアナWOLのモデルです。
アナザーWOLは、鬼畜でドSで独占欲過多の冷血という、MY設定。
…って、これじゃあ一般的な皇帝ですね…。
いいんです!ウチの皇帝は、もうフリオにベタ惚れなのがデフォでいくんです!!
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