夢を見た。
砂嵐に消えてしまいそうな石造りの宮殿が、俺の前にそびえ立っている。
風の音が聞こえる、どうやら俺の事を奥へ奥へと手招いている様だ。
どうするべきか迷っていると、ふと風の音に混じって羽ばたく翼が舞い降りた。
大きなイヌワシは、宮殿の脇の枯れた木の枝に止まると一声鳴いた。
じっと俺を見つめている相手は、案内してくれる様に飛び上がった。
ふいに、俺はきっとここに誰かに呼ばれて来たんだ、と思った。
一体、誰が呼んでいるのか。
何もかも分からないままに、歩き出した。
光が丸い柱に当たって、面白い影を作り出している。
ここに溢れている空気は、不思議な力を帯びている。
どこか懐かしくて、儚くて……側に居て欲しいそんな力。
宮殿を歩く足音と前を行く羽ばたく翼の音、そして遠くから聞こえてくる鈴の音。
鈴の音の主が、俺を呼んでいるんだ。
急に前が開けた。
元々は広い聖堂だったのだろうそこは、屋根が崩れ落ちて青空が広がっている。
その部屋の中央で、白い衣を纏った誰かが片手の鈴を鳴らしていた。
彼の腕へと、俺を案内してくれたイヌワシが止まる。
「来てくれたんですね、本当に」
「あっ……」
どうしてこんな所で会えたのか、貴方はもうここには居ないハズだろう。
そう言いたかったけれど、口から出た言葉は違う。
「ミンウさん!」
もう会えないと思っていたから、嬉しかった。
走り出した俺を、しっかりとその胸に抱き締めてくれた。
ああ、この感覚は…この人が俺を甘やかしてくれる時のあの腕だ。
安堵の溜息を吐く俺の頭を、そっと彼の手が撫でた。
「君はいつもそうだ、仲間の前では去勢を張っているのに…私の前では酷く子供になる」
しかし、それが嬉しかったのだ…と彼は言う。
しばらく聞く事の出来なかった声が、こんなにも懐かしく感じられるものなのかと、そう思った。
「貴方には、もう会えないのかと思った」
「いいえ、本当なら君とはもう会えないハズですよ。しかし……そうですね。未練があったのでしょうね…もう少し、君に何か言葉を残しておきたかった」
そう言うと、俺を腕からちょっと離してちょっと笑いかける。
「君は特別だった。君の背中には、私達の夢がある。故に、君には苦しい思いを強いてしまった。私は恨みましたよ、幸福な君の道を奪ってしまったこの世界を」
それはどうなるものでもない、俺が生まれたのは間違いなくこの世界だ。
俺が歩む道を悔いた事はない、嘆いた事もない。
悲しい過去も、苦しい現状も、ただそこにあるだけで変化したりしない。
俺は未来を望むしかないのだ、己の手で掴みとれる未来を。
「君は、本当に強がりだ」
そう言うと、ミンウさんは俺の額に口付けた。
「知っていますよ、君が苦しい事も悲しい事も、怒りも恨み事も……全て吐き出してしまいたい感情を、その身の内に宿している事を」
そっと撫でてくれていた手が止まる。
俺を覗きこむ彼の目は、酷く優しくて真剣だ。
「私は祈りましょう、願いましょう、ただただ君が幸福に包まれる事を」
そっと口付けてくれた、今度は俺の唇に。
優しく触れてくれた彼は、俺を見て微笑む。
ただその笑顔に、俺の心が酷く痛む。
その笑顔さえあれば、俺は幸せだったのに……。
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先日、ある映像を見たのですが…その中に出てきた、白いターバンに白い衣装の褐色の肌の青年が、どうしてもミンウさんに見えたという罠。
その子は鷲の尾羽持って踊っていたんですけど、それが凄く様になっていて綺麗でした。
そしてこんな感じの映像が出てきたのですね。
ミンウさんとフリオは、とっても中東的な雰囲気がある……二人の独特の色気が凄くいいです。
フリオニールを甘やかしているのは、レオン兄さんよりもミンウさんの方じゃないかな…と時折ですが思います。
でもレオンさんよりも、ミンウさんの方が甘やかし方は上手いと思うのです。
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