「2号車、駅出発します」
無線に向かってそう報告し、停留所から発車する。
バスの車内は満員だ、授業時間前だから生徒の数が多い。
生徒の数が多い時間帯の為、バスはひっきり無しに行き来している…歩いて行けない距離でも無いんだろうが、生徒の大半はバスを利用している。
まあ、山の中にあるからな…女子学生がヒールで歩くには、ちょっと足が痛くなるのかもしれない。
混み合っている車内はそれと同じ様に学生の話声で賑やかだ。
公共交通機関ならば迷惑がられるだろうが、此方は彼等が居なければ仕事にならない訳だし、学生同士が集まって静かというのも、何だか変な話だ。
無線から流れて来る同僚の声を聞きつつ、決められた道を走っていく。
向こうから来たバスの運転手に手を挙げて挨拶すれば、相手もそれに応じてくれる。
バスの往来が激しいという事は、すれ違う事も多いのだ。
赤くなった信号の前で止まると、丁度曲がって来たバスが目にとまった。
学校名が入った同じ型のバス、運転手に向けて手を挙げようとして、ふと一瞬それを躊躇った。
バスの大きなフロントガラス越しに見えた、輝かんばかりの笑顔。
お前はどこの女子学生だ?とツッコミを入れたくなる位に、自分に向けて手を振ってくれている後輩。
犬だったらはち切れんばかりに尻尾を振っているに違いない、いや実際に耳と尻尾が見えそうだ。
そんな相手に自分は苦笑いして、形式通りに手を挙げて応じる。
また飯時になれば昼食に誘われるんだろう。
今日はどこに行こうか、なんて思いながら、青に変わった信号を左へと曲がった。
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名前出してないですけど、後輩がティーダで一人称の方がフリオです。
偶然にもバスで立っていまして、しかも運転手さんのすぐ傍でだったものですからね……目撃したんですよ。
対向車の若い運転手さんが、曲がり際にもの凄い笑顔でコッチに手を振っていたんですよ。
それが自分には、ティーダを彷彿と思い出させたものですから…つい。
そしてこれ、実はまだ続きがありまして、彼はひとしきり手を振った後、顔の前で2回手を叩いてそしてパッと両手を顔の前で開く…という意味不明の動作を取られていたんですね。
一体、何が目的だったのか?そして、此方の運転手さんは銀に近い色した白髪混じりの髪のダンディーな方で、明らか相手の若い運転手さんの先輩だと思われるのに、その態度で許されるのか?
……なんて事を思っていました。
一緒にそれを目撃した友人は、以前対向車の笑顔の運転手さんのバスに乗った事があるとか…。
その時、一緒に乗車していた助手か何かの方にいきなり「今日、これ終わったら一緒に銭湯行こう」等と持ちかけていたそうです。
ちなみにコレ…運転中にだそうです。
……世の中には、色々と萌えな変わった方が居るようで。
いやはや、見ていてちょっと楽しいです(笑)。
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