「ありがとう、お兄ちゃん」
ニッコリ笑って、少女は俺に飴を差し出した。
一人で迷子になっている女の子を見つけ、お母さんを探してあげるのを手伝ってあげた、それだけなのに。
泣いていた女の子は、最後に笑って俺にそう言ってくれた。
肩から下げていた鞄から、何かを取り出して俺に差し出した。
「優しいお兄ちゃんに、お礼」
「ありがとう」
断るのも悪い気がして、その子からオレンジ色の飴を受け取る。
バイバイと手を振る女の子に手を振り返し、母親に手を引かれて遠ざかっていく女の子を見送って、そういえば、自分の待ち合わせをしていた相手は一体どこだろうか?と思った。
「全く、自分から約束しておいて……」
そう文句を言うものの、相手がいなければそれもただの独り言。
携帯のメールを確認するものの、新着は無し。
今一体どこに居るんだか……。
さっき貰ったばかりの、飴の包み紙を取り中身を口へ運ぶ。
白い棒の付いた飴を舐めつつ、相手を待つ。
「フリオ、お待たせッス!!」
走って来た相手が俺へ向けて頭を下げる。
「遅いぞ、ティーダ」
笑顔で何度も謝る相手に、俺は溜息交じりにそう言う。
「あれ、フリオ何食べてるんッスか?」
俺の咥えている物に気づいたらしいティーダが、俺の口から出ている白い棒を指して言う。
「何って、飴?」
「何で疑問系なんッスか?……いいなぁ、オレも欲しい」
そう言うティーダに、俺は溜息。
仕方なく、さっきまでの経緯を説明する。
「へぇ……フリオ、ロリコンッスか?」
「何でそうなる?」
怒りを露わにする俺に対しティーダは笑顔のまま、俺が持っていた飴をパクリと咥える。
「あっ……」
「もーらいッス!」
悪戯をやり遂げた子供の様な表情で、ティーダはそう言って俺の手を取る。
「ほら、行くッスよ」
そう言って歩き出すティーダに引っ張られ、歩き出す。
「美味しいッスね、オレンジ味」
「そうか……」
口に含んだ飴を味わいながら、嬉しそうにそう言うティーダ。
遅れて来て、反省して…そんな人間が人の物奪うか?
そんな事を思っていたら、「フリオ口開けて」と言われて、ついうっかりその言葉に従ってしまう。
「んっ!」
「ありがとッス、美味しかった」
そう言うものの、彼が返却した飴はまだまだ十分な大きさが残っていて。
よくよく考えたら、これって間接キスになるんじゃないかな……なんて事を、自分の口の中にあるオレンジ味を感じてから思い、俺は羞恥で顔が赤くなった。
そんな事は気にせずに、どんどんとティーダを俺の手を引いて歩いて行く。
「今日はフリオの事、連れて行ってあげたい所があるんッス」
そう言う彼の表情が、どこか普段よりも嬉しそうで……。
まあ、遅れた事は勘弁してやろうか……と、仕方なくそう思った。
結局、俺は彼には甘いらしい。
口の中の飴くらい、甘やかさないように…気をつけた方がいいかもしれない。
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という事で、オレンジデーなティフリでした。
箱買いしたチュッパチャップスですが、フルーツ&ドリンクの箱なのに、どういう訳かオレンジ味は入っていないんですよ……。
チュッパで好きな味はストロベリー・オレンジ・パイン・ラムネ・プリン・キャラメルの6つです。
チュッパは意味が分からない味があったりして、中々面白いですよね。
恋人同士でお祝いとか言ってますが、彼等二人は別にお祝いしてないですね。
前回のブログで書いた、飴を奪うというシュチュエーションをやりたかっただけなんです。
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