「フリオニール、結婚してくれ」
真顔でそう言われて、洗っていた途中の皿を取り落とした。
ガシャーンという音と共に、地面で粉々になった皿を意識している暇はない…今、俺の頭の中は大混乱している。
「…………ウォーリア、今何て?」
「結婚してくれ、フリオニール」
どういう事だ?
何故、この人は俺にこんな事を…まさかとは思うけれど、いやそんなバカな。
この人がそんな男を好きだとか、俺を好きでいてくれるとか…むしろ、俺と結婚とかそんな……。
真っ赤になってうずくまってしまった俺に、ウォーリアは「大丈夫か」と声をかける。
その質問に俺は無言で何度も頷き、割れてしまった皿を片づけていく。
とにかく、今この人と目を合わせたくなかった。
「あの、ウォーリア…どうしてそんな事を?」
割れた皿の破片を拾いつつ、彼の足のつま先を見てそう尋ねる。
「いや……セシルが、私と君を見ているとまるで夫婦のようだと、話していたんだが」
「…セシルが?」
「そうしたらバッツが、折角だから結婚したらどうだと言ったものだから」
だから、って…そういうものじゃないだろう。
「あの、ウォーリア…結婚の意味分かってるのか?」
「バッツは、こう言ったら君が喜んでくれると言ったのだが?」
不思議そうに首を傾ける彼を見て、俺はなんとか落ち着きを取り戻してきた。
あっ、うん…成程……理解した。
彼に『結婚は何か』について説明し、その後、バッツを説教しに向かった俺。
「セシルも、どうして俺とウォーリアを夫婦だなんて言ったんだよ?」
そう尋ねると、セシルは困った笑顔を見せて「違うよ」と言った。
「僕はね、フリオニールは皆のお母さんみたいだね…って言ったの、それで、ウォーリアはお父さんみたいだね……って」
「俺が母親って……」
「ふふ、バッツを怒ってる姿なんて見てると、本当にお母さんみたいだったけどね」
そう言って笑う彼に、俺は溜息…流石にセシルには勝てない。
「でも、とってもいい組み合わせだと思うよ。本当に結婚したら?」
「えっ!…ちょっ!!セシル!!」
恥ずかしくって真っ赤になる俺に、セシルは「嘘だよ」と笑って言った。
でも、あの人に結婚してくれと言われて…本当に少し嬉しかったのは、言わない方がいいよな?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
という事で、エイプリルフールな人達。
嘘をついて笑って許されるのは、やっぱりセシルが一番だと思います。
因みに、ウォーリアさんは嘘なんて言わないと思います…基本的に全力投球、思った事はそのまま言う人がいいですね。
PR