朝の用意をしていると、玄関先から「先に行くよ」と声がかかった。
今日は同じ時間から授業のハズなのに、どうして、今日は私よりも早く家を出るのか?
「早いな」
玄関先に立つ彼に向けてそう言う。
「ああ……昨日さ、自転車のタイヤパンクしちゃって…歩いて行かないといけないから、先に行くよ」
「なら、乗って行けばいい」
鞄を閉めて、家の鍵を手に私も立ちあがって玄関へ向かう。
「えっ……乗って?」
「私の自転車の、後ろに」
「え……ぇええ!!」
ビックリする彼に、私は微笑みかける。
「あの、ウォーリアいいよ…俺、歩いていくから」
「それじゃあ時間がかかるだろう?いいから早く乗りなさい」
自転車置き場から愛用の自転車を出して来てまたがると、後ろを指す。
そうすれば、彼は恥ずかしそうに頬を染めつつも、私の後ろへとやってくる。
「しっかり掴まっておけよ」
「分かってるよ」
私の背に感じる彼の手の温もりに、笑みが零れる。
引っ越してきて良かったな、と思う。
なかなか、良い雰囲気の町だ。
「なぁウォーリア……なんか恥ずかしい」
背中の向こうからそう言うフリオニールに、私は苦笑い。
「安心しろ、どうせ仲の良い友人くらいにしか見られていない」
「そうだろうけど……」
だが、恥ずかしいと言いながら彼の腕はしっかり私の背中を掴んで離さない。
危ないからなのだろうが、そんな彼を愛らしく思いながら自転車をこいでいく。
「おはよーッス!!」
そんな私達の後ろから、走って来た少年が挨拶をする。
「おはよう」
「おはよう、ティーダ」
引っ越してきたマンションの隣に住む高校生の少年が、私達二人に向かってほほ笑みかける。
「仲良いッスね、なんか夫婦みたいッスよ」
「なっ!!ふう…」
「フリオニール、暴れるな…危ないだろう」
「暴れて無いから!!」
バランスを崩しかける相手に、私は笑い、その隣で自転車を漕いでいた少年も笑う。
「じゃあ、オレ急いでるんでまた!」
そう言って私達を追い越していく。
近所の商店主等に、挨拶をしていく少年。
「良い所だな」
平和な雰囲気の街並みを眺め、私はそう呟く。
「そうだな」
後ろで呟く彼の同意を聞き、私は嬉しくなってどんどんとペダルを漕いでいく。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いや、学校行くのにね…マンションから自転車で二人乗りで笑いながら走っていく学生を見て、可愛いなぁ……とか思ったんですね。
っていうか、WOLとフリオの自転車二人乗りを一人で想像してただけです。
自転車の少年は、朝の商店街で見かけた少年です。
商店街の親父さんに「おはようございます!!」と、それはもう…とても爽やかに挨拶して、颯爽と走り去って行きました。
いやぁ、礼儀正しい少年だなぁ…スポーツ系かな?とか思ってたんですよ。
この日常ネタ、最近ちょっとウケてる様なので…多少調子に乗ってます。
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