「あの……今、何て?」
つい、そう相手に聞き返してしまう。
「ですから、この国を救う為に、召喚士になって下さいませんか?」
「何で俺が!?」
俺のような何の魔法の素養もない人間が?
いや、それ以前に、ただの訓練兵の俺に、どうしてわざわざこんな国を動かすような人が頭を下げているのか、まったく意味が分からない。
「君の返答に、この国の未来がかかっているんですよ」
「いや、ちょっと待って下さいよ!!俺、今までに魔法なんて習った事ないんですよ、なのにそんな…召喚士なんてできません」
それが俺の精一杯の返答だった。
絶対に、何か勘違いをされているに違いない、そうとしか思えない。
「いいえ、君には才能がある」
俺の返答に、最初から予想していたように、彼は笑顔のままで俺に向き合う。
「才能なんて……なんでそんな」
「君の影には、別の誰かが居ますね?」
「!!」
宮廷魔導士の言葉に、ビックリする。
「気づいていないとでも思いましたか?君の影に宿っている、君の相棒さんの事くらいであれば一目で見ぬけますよ」
そうだ、彼は国内でも有数の魔導士、これくらい見抜けなくてどうする。
「……だから、どうしたんですか?」
「君は分かっていますか?力で相手を屈させない、その力は…召喚士としては申し分ないものなのです。
その力が、今、この国には必要なのです」
真剣な眼差しでそう言う相手に、俺はたじろぐ。
必要だなんて言われても、俺のようなただの人間にこの国の未来がかかってるなんて、どうしても考えられない。
国が求めている才能?そんなもの俺にある訳がない。
大体、俺がこの影に宿っている相棒と契約を結んだのだって、ほんの偶然の出来事なのだ。
俺の才能とか、そんなものはきっと関係ない。
『俺は、そうは思わないけどね』
ふと、俺のそんな考えを否定する声が俺の頭の中だけで響く。
『俺はアンタには才能があると思うよ。俺達が人に従うのは力だ、いつだって力の強い者の下に俺達はひれ伏す…だけど、アンタにはそれ以外のもので、俺達を従わせるだけの魅力がある。
だから…俺はアンタの傍に居たいんだ』
そんな事、言われたって……。
「俺じゃ、何のお役にも立てませんよ」
そう、今の俺はあくまでもただの一般の訓練兵なのだ、大した力は持っていない。
「それは重々承知の上です、しかし事態は急を要しています、君程の才覚ある人物がまた運よく見つかるとは限らない…そこで、提案があるのですが」
「……何ですか?」
「私の弟子として、しばらく魔法の素養について学びませんか?ちゃんとした召喚魔法を使えるようになれば、君はグングンとその実力を発揮できるハズなのです」
「いえ、あの……」
そんな悠長な事をしてる場合なのか?
召喚士を一から育てるくらいなら、どこかから金で雇った方が早い気がするのだが……。
「金で動く人間は金で裏切ります、名誉で働く人間は名誉で裏切るのです」
そんな俺の考えを見透かしたように、ミンウさんはそう言う。
「結局の所、国を裏切らない人間というのはこの国を故郷として愛し、この国を守ろうとする意思のある人間です…つまりは、君のような人です」
そう言ってほほ笑む彼に、俺はぐうの音も出ない。
国を救う?どうしても、彼の言葉をそのまま信じる事ができないのだが…そこまで頭を下げられて、それでも首を横に振れる程、俺は人が悪いわけではない。
「俺みたいな、初心者で大丈夫でしょうか?」
「ええ、君がそう言ってくれるのを、私は期待していたんです」
そう言って、俺の師匠は穏やかに微笑んだ。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
という事で、弟子入りしましたフリオニール。
兵士の道をあっさり諦めてしまうのかって、まあ、そんな突っ込み入れちゃいけないんですよ。
フリオは何だかんだ言って、弓とか剣とか影で練習してます。
ロッド片手にしてても、腰には剣というかんじで護身用の武器を手放さない召喚士だと思う。
……誰か、良い感じにキャラデザしてくれませんかね…。